昔だけの風習と今にも続く風習
盆棚の飾り方
仏壇の前に小机を据えて、お供え物・故人の好物を置き、ご先祖様をお迎えします。地域で違いはありますが、基本的には位牌を中央に置き、周りは青竹とほおずきで四方を囲みます。果物や故人の好物、ナスとキュウリの精霊馬、そうめんを供えれば完成です。
なお、お盆のお供え物につきものの食べ物にそうめんがあります。特にそうめんが選ばれてきた理由は、幸せが細く長く続くようにとの願い、ご先祖様が精霊馬にのって帰るときの手綱、ご先祖様の荷物をくくる荷綱などいろいろな解釈があります。
盆用意
地方によってお盆の支度をいつから始めるかは違いますが、初日の迎え盆までにお墓の掃除や仏壇の掃除、精霊棚の飾り付けやお供え物などの準備を行ないます。
昔は旧暦でいうと7月1日、または、関西では7月7日から支度を始めた言われています。
七日盆(なぬかぼん)
七日盆とは、お墓そうじゃ仏具磨きをはじめ、井戸や池をさらい、水替えをする盆始めを7月7日に行なうことをいいます。
盆路(ぼんみち)
盆路は、祖先の霊を迎えるために、精霊の通路をきれいにする意味がある掃除です。家の前、お墓の前、または、お墓から家までの道の草刈りや掃除をします。昔は村境や山の頂までの道の草刈りをしたと言われます。
盆花迎え
盆花迎えは、仏壇や精霊棚に飾る花を、旧暦で7月13日の早朝に野山から採ってくることです。7月11日を花取日とする地域もあります。
たとえば、栗の小枝を墓に供え、先祖の霊に祈り、その小枝を持ち帰るならわしもあります。盆花は先祖の霊が宿る依代(よりしろ)となりました。(依代とは、神霊が寄りつくもの、神霊の憑依物のことです。神域を指すこともあります。)
桔梗(ききょう、女郎花(おみなえし)、鬼灯(ほおずき)などや、故人の好きな花を供えます。
桔梗(ききょう) | 萩(はぎ) | 女郎花(おみなえし) | 山ゆり(やまゆり) |
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樒(しきみ) | ほおずき | 撫子(なでしこ) | 日比谷花壇 |
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生御魂(いきみたま)
亡くなった先祖の御霊を迎えるけでなく、いまも健在の親や年長者を大事にすることも、お盆のならわしでした。挨拶に伺う、贈り物をする、御馳走するなど。蓮の飯と剌鯖は、定番の贈り物です。
近代の東京でも、老いた親へ、盆中に魚を捕り、調理して親にすすめる風習がありました。生きた御魂も盆に拝む風習があったためといわれます。生盆(いきぼん)とも。
刺鯖(さしさば)
鯖(さば)の鱗と内臓を取り、背開きにしてから塩漬けにし、二尾を重ね、頭のところで刺し連ねて刺したもの。お盆の頃の鯖は脂が乗って美味。塩漬けにすると、いい保存食に。江戸時代にはお盆の際に欠かせないものの一つであったといいます。
蓮の飯(はすのめし)
もち米で炊いた飯を蓮の葉で包んだもの。親はもちろん、名付け親や仲人、親戚らに贈ったそうです。
盆菓子
盆棚に並べる菓子のこと。
干菓子の一種の落雁(らくがん)が多いですが、宗派や地方によっても違いがあり、団子などを供える場合もあります。故人の好物を供えても構わないいとされます。お盆の時期になると色鮮やかな落雁を売る和菓子屋も多く見られます。
お盆のおはなし
月遅れ盆、旧盆
お盆の日にちは地方により異なりますが、多くの地域では8月13日から16日に行います。もともとお盆は、旧暦の7月13日から16日でしたが、明治時代に暦の国際基準化を目的として行われた改暦により、日本の各行事は30日遅れとなりました。そして、旧暦のお盆を1か月ずらして行う月遅れ盆の8月13日から16日が標準的な日程となりました。
多くの地域では月遅れで行ないますが、いまも旧暦に行なう旧盆の地方があります。旧盆は沖縄や奄美などで、新暦は関東、北陸中部などの一部で行なわれています。また8月1日にお盆をするところもあります。
釜蓋朔日(かまぶたついたち)
旧暦7月1日は、地獄の釜の蓋が開き、死者たちが家に帰ってきはじめる、といわれます。つまりこの日に、あの世を旅立って、7月13日のお盆に子孫の家へ戻ってくるとされます。
施餓鬼(せがき)
精霊棚のかたわら、または別に無縁棚(むえんだな)や施餓鬼壇(せがきだん)を設け、無縁仏のために供養をするならわしがあります。無縁仏を弔う読経をしたり、お供え物をしたり。
お盆のときに、子どもは川に流すお供え物や、他人の畑の作物を自由に食べていい、とする慣習もあります。それは子どもが精霊の代理とみなされ、先祖にかぎらず、精霊を、また無縁仏や餓鬼をなぐさめ、つつがなく送り出す意味があったといわれます。
*関連語「月見どろぼう」
薮入り(やぶいり)
江戸時代、商家などで住み込みで働く丁稚奉公の人々、嫁入り先のお嫁さんが、小正月1月15日とお盆の7月15日の翌日の16日だけは、休みがもらえて、故郷に帰ることができたのです。これは「薮入り」とも呼ばれました。その薮入りは、生御魂(いきみたま)の慣習と関わりがあったといいます。この時期、親や親戚の長寿を祝おうと、いきみたまに集まるために、お嫁さんや奉公人がお休みをとったのが由来だそうです。
「盆と正月が一緒に来たよう」ということわざもありますが、年に2度の帰郷がいかに楽しみだったかを表している言葉なのです。
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